パスハ後第6瞽者
聖使徒行実38端;16:16-34
16 一日我等が祈祷の所に適きし時、卜筮の鬼に憑らるる一の婢我等に遇へり、卜筮を以て其主に多くの利を得しめたる者なり。
17 彼がパワェル及び我等に従ひて、呼びて曰へり、此の人々は至上なる神の諸僕にして、我等に救の道を伝ふる者なり。
18 日久しく之を行ひしに、パワェル遂に之を厭ひ、顧みて鬼に謂へり、我イイスス ハリストスの名を以て、爾に彼より出づるを命ず。鬼忽出でたり。
19 婢の主は其利の望の空しくなりたるを見て、パワェルとシラとを執へて、市に有司等の前に曳けり。
20 既に上官に曳き来りて曰へり、此の人々はイウデヤ人にして、我等の邑を擾し、
21 我等ロマ人に受くべからず行ふべからざる例を伝ふ。
22 民も亦斎しく起ちて、彼等を攻め、上官は彼等の衣を褫ぎ、命じて彼等を杖うたしめたり。
23 多く杖うちて後獄に下し、獄吏に固く彼等を守らんことを命ぜり。
24 獄吏是くの如き命を受けて、彼等を内獄に下し、其足に梏を加へたり。
25 夜半の頃、パワェル及びシラ祈祷して、神を讃栄せり、囚者之を聞けり。
26 俄に大なる地震ありて、獄の基動き、諸門皆忽啓け、各人の械は解けたり。
27 獄吏醒めて、獄の諸門の啓けたるを見て、囚者逃げたりと意ひ、刀を抜きて自殺せんと欲せり。
28 然れどもパワェル大なる声を以て呼びて曰へり、自ら戕なふ勿れ、蓋我等皆此に在り。
29 彼火を索めて、躍り入り、戦きてパワェル及びシラの前に俯伏し、
30 彼等を外に導き出して曰へり、君よ、我何を為して、救を得べきか。
31 彼等曰へり、主イイスス ハリストスを信ぜよ、然らば爾及び爾の全家救を得ん。
32 乃主の言を彼及び凡そ其家に在る者に伝へたり。
33 彼は夜の即時に彼等を取りて、其玷を濯ひ、直に自ら其全家族と洗を受けたり。
34 遂に彼等を引きて、己の家に入れ、食膳を具へ、全家と偕に神を信ぜし事を喜べり。
口語
16:16ある時、わたしたちが、祈り場に行く途中、占いの霊につかれた女奴隷に出会った。彼女は占いをして、その主人たちに多くの利益を得させていた者である。
16:17この女が、パウロやわたしたちのあとを追ってきては、「この人たちは、いと高き神の僕たちで、あなたがたに救の道を伝えるかただ」と、叫び出すのであった。
16:18そして、そんなことを幾日間もつづけていた。パウロは困りはてて、その霊にむかい「イエス・キリストの名によって命じる。その女から出て行け」と言った。すると、その瞬間に霊が女から出て行った。
16:19彼女の主人たちは、自分らの利益を得る望みが絶えたのを見て、パウロとシラスとを捕え、役人に引き渡すため広場に引きずって行った。
16:20それから、ふたりを長官たちの前に引き出して訴えた、「この人たちはユダヤ人でありまして、わたしたちの町をかき乱し、
16:21わたしたちローマ人が、採用も実行もしてはならない風習を宣伝しているのです」。
16:22群衆もいっせいに立って、ふたりを責めたてたので、長官たちはふたりの上着をはぎ取り、むちで打つことを命じた。
16:23それで、ふたりに何度もむちを加えさせたのち、獄に入れ、獄吏にしっかり番をするようにと命じた。
16:24獄吏はこの厳命を受けたので、ふたりを奥の獄屋に入れ、その足に足かせをしっかとかけておいた。
16:25真夜中ごろ、パウロとシラスとは、神に祈り、さんびを歌いつづけたが、囚人たちは耳をすまして聞きいっていた。
16:26ところが突然、大地震が起って、獄の土台が揺れ動き、戸は全部たちまち開いて、みんなの者の鎖が解けてしまった。
16:27獄吏は目をさまし、獄の戸が開いてしまっているのを見て、囚人たちが逃げ出したものと思い、つるぎを抜いて自殺しかけた。
16:28そこでパウロは大声をあげて言った、「自害してはいけない。われわれは皆ひとり残らず、ここにいる」。
16:29すると、獄吏は、あかりを手に入れた上、獄に駆け込んできて、おののきながらパウロとシラスの前にひれ伏した。
16:30それから、ふたりを外に連れ出して言った、「先生がた、わたしは救われるために、何をすべきでしょうか」。
16:31ふたりが言った、「主イエスを信じなさい。そうしたら、あなたもあなたの家族も救われます」。
16:32それから、彼とその家族一同とに、神の言を語って聞かせた。
16:33彼は真夜中にもかかわらず、ふたりを引き取って、その打ち傷を洗ってやった。そして、その場で自分も家族も、ひとり残らずバプテスマを受け、
16:34さらに、ふたりを自分の家に案内して食事のもてなしをし、神を信じる者となったことを、全家族と共に心から喜んだ。